パンカル半島は、あのプラトンの”Atlantis”か (3)

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ロマンのアトランティス話は、日本の邪馬台国を巡る諸論と似ているところがあります。一番の違いは、そもそもアトランティスは在ったのか、プラトンの話は歴史として扱えるのか、というそもそも論があることです。

従って、①そもそも論(否定派)、②在った、何処か派、③受け入れ・納得派、④分からない(何とも言えない)派、⑤話に便乗派 などに大別され、それぞれ色合いがありますが、②は在って欲しい、在ったとすれば、なども混じった上でともかく何処か、追求派と言えましょう。

そして話は、②派がリードする形で盛り上がり、しぼみ、を繰り返す中、①派が冷ややかに否定し、④派がそれらしいものを見つけたと言ってみたり、⑤派が観光地、飲食店を展開したりといった状況で、何千という関連本が書かれています。

アトランティスは、古代ギリシア哲学者プラトンが著書対話篇の『ティマイオス[1]及び『クリティアス[2]の中でエジプトの神官が、訪れた客人のギリシャの哲人ソロンに9千年前のギリシャの誇るべきこととして語った話(BC565年頃)です。(従って、11,600年前頃という数字が一般的です。) (Wikipedia)

ソロン(帰国1年後に死亡)は、内容をギリシャ語に翻訳して話を友人の執政官に、それがその親族世代を経て結局、プラトンも耳にし書いたことになるような本で、邪馬台国話とは異なり原文は長文のかなり詳細な当時の状況を記述した内容です。

その後への影響も大きいアリストテレスによるプラトンの創作という発言とされるものは、何処をとらえてのものか不明ですが、作中のあの哲人ソクラテスは③派です。

ラファエロ画, 1509年 プラトンとアリストテレス。(Wikipedia)

エジプト神官は、活字で書かれたものをベースにソロンに話した、話の内容をエジプトの
ヒエログリフで見た(ギリシャ哲人Crantor)などは、現在、確認されていません。
また、作中のCritius(実在)は、自分が曽祖父から聞いた話をその時に同席していた友人
にも内容を確認した、不思議だがこれは真実だ、とプラトンは述べさせ書いていますが、
①派はプラトンの「高貴な創作技法」としています。
プラトンの人となり、有していた当時の問題意識や関心、エジプト訪問歴などからの見方は、
決め手として採用するのは難しいです。

アトランティスは、大陸と呼べるほどの大きさを持ったで、この記述は、一部に大半島であったのではという説(パンカル半島?)のもとになっています。そこは、沢山の象もいる動植物、鉱物、豊かな環境に恵まれて繁栄した王国です。

この気候、豊かな動植物、鉱物などの環境に関する記述が、ここの小学生たちに世界のどこの国のことかと聞けば「此処!!」と答えるぴったりで詳細なものです。世界の学者もアトランティスが存在するなら、赤道付近ということで一致しています。

問題は、赤道付近の此処が、あたかもアトランティスのようにその過半が沈んだ大半島地であるということが世界でよく理解されていないことでしょう。

アトラスの王国は、灌漑等の水路を有する370km×555kmの広さで、その矩形に接する形で外海に面した王宮地区があります。一般には、アトランティスと言えばこの王宮地区とそのシンボル図をイメージして語られます。

そして、このシンボルの形状が至る所で様々に現れてくることもアトラティスの存在を支持する人たちの大きな理由になっています。例えば、英国のストーンヘンジの形状が同様だという人がいます。

他方、既に歴史を知っている私たちからすると、11,600年前という狩猟採集の石器時代というイメージと金像、灌漑水路等を有するこの王宮地区の既述はマッチしません。①論者が此処の記述をもって即座に否定するのも分かります。

尤も近年、発掘が進むトルコ南西部のこの時代のギョベクリ・テペ遺跡は、広い地域に驚きの巨石構造物を有し、石器時代イメージを一新しています。従って、沈んだ海底に何があるか分からないというロマンにもなっています。

次に書きます軍事力の記述などと共に、アトランティスの状況は青銅器時代をイメージして書かれていると解されています。

考えてみますと、プラトンは人類史も石器時代も何も知りませんので、神が世を創ってからほぼ同様の時代が続いていたと考えて不思議はなく、読んだり聞いたりした当時の人たちもあまり違和感なかったであろうことが、私たちとの大きな差でしょう。

アトランティスは、三段櫂船を有する強大な軍事力を背景に世界の覇権を握ろうと地中海の植民地(エジプト、リビアの一部、イタリア西方など)を足掛かりにギリシャ連合軍と戦ったが敗れた。

三段櫂船(wikipediaから)

この強大なAとBが闘うというのは、ギリシャ神話の神々の戦いモチーフとしても普遍性があり、また、「国家」のあるべき姿、ギリシャの立て直しに関心を集中していたプラトンの創作という見方がありますが、一理あると思います。

アトランティス話はプラトン晩年に書かれ、かつ、未完であり、最後に傾注して書き上げられたのは「法律」でした。戦いの細部の状況は最早重要なものではなかったのかもしれません。

なお、欧米では、自由の盟主アメリカ中心の西側と共産ソ連率いる東側の冷戦は、古代からなじみある分かりやすい話ということもよく理解できます。

そして、勝ったギリシャ兵士は地震と洪水により一昼夜で地中に没し、アトランティス本国もその邪悪と堕落がゼウスの怒りに触れて同様に海中に沈められた(11,600年前頃)とされている。

この勝った正義の解放者ギリシャも堕落してしまった邪悪なアトランティスも共に没した結果が意外であることと、大事件の時期が更新から完新世への激動の転換期という人類史の重要な時代であり、エジプト神官・プラトンが全く想像もし得えない創り得ないことから、広域にわたる地球的なカタストロフィの可能性を含め注目されています。

以上、アトランティスに係る状況は、その環境は正にパンカル半島が該当すると考えられる部分と、青銅器時代やギリシャ神話をイメージしたのではないかとも言われる島内施設や戦いの態勢などの記述、そして結末のカタストロフィの可能性という現代的課題となるでしょう。

当初①~⑤まで単純に分けましたが、部分複合というのが私の考えであり、島内施設等はロマンを込めて将来の発掘に期待したいと思います。

なお、一部学者は、人類の文明はかって高度に発達したが天災で消滅し、ご破算の状況から再び発展させたというプラトンも作中で同様のことを述べている先行高度文明論とでも呼ぶべき論もあります。宇宙人UFO論は、思考に入れていません。

さて、パンカル半島が最有力候補として挙がるのは理解したが、それだと変じゃないか、という声について次回考えたいと思います。

以上

 

 

 

 

 

 

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