コロボックル小人再考、明治・大正の先達学者は凄かった!

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北海道先住のコロボックル小人を巡る明治時代の論争は、文明開化後の近代日本学術の確立に向けた学問意欲の成果です。坪井教授は、白人、黒人等の人種や日本の土蜘蛛とさげすまれた人などに、人として何の区別もなく、人猿も同祖と言って真理追求に邁進しました。日本列島に人種交替などなく、最古人以来この列島で育まれた、また、人類起源地は熱帯地方、コロボックルはアメリカ先住民と関連ありなどという視野も当時として素晴らしいものです。これらの中には、現代学界が最近達した高みの事すらあります。(学問研究法の成果は略します)

清野教授の日本原人論は、 始まりに光を当てた 「最初の日本人」真理を探求された事もさることながら、実施可能な地道な研究を通じて、始まりの原(*祖)人の均質性や日本人が列島内で生成されたことの実証、また、2~3千年間という学界の歴史認識の中、列島史に数万年までの視野を持たれました。実はこの種の研究が、当時は皇室尊崇にいささかの誤解も持たれぬよう難しい状況で行われ、憎めない「コロボックル」名称は、研究のコードネームであったかのようにも感じられる良い面がありました。現代の学者が、コロボックルと聞いて相手にしないようなら余りに狭量で、今再び当時の論争に現代科学の光を当てて、成果の継承進化を図ってほしいものです。当時の先達が、刺されることも牢に入ることもなく、学者の良心に従い、慎重・地道かつ大胆に論争して真理を探求され、無論、過誤もありますが挙げられた成果の大きさに驚き、 その研究努力と論議に 敬意を表するものです。何しろ現生人類の出アフリカも、DNA分析も、黒曜石原産地特定も、太古の地域や環境の変化すらも全く知り得ず、発掘も極めての制約多い中での研究でしたから、凄いの一言です。こういう「コロボックル研究」のようなものなら、文系理系を問わず、多大な科研費投入に何の文句もありません。

さて、当時の皆さんに、北海道大学のアイヌDNA分析からの結果をお知らせしたらどういうことになるか、口角泡を想像するだに楽しくなります。現代の学者が 我らが 祖先の始まりに熱い議論もなく、さっぱり最古列島人からの先史を総合的に教えてくれず、先達の 研究の曲折や成果すら子供たちに教えないのが不満です。なお、参考にさせて頂いた三上徹也氏の「人猿同祖なり・坪井正五郎の真実」―コロボックル論とは何であったか―は、素晴らしい労作で一読をお勧めします。今、2.7万年前の石垣人遺跡の国指定という良いニュースも飛び込んで來ました。

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